植物工場の基礎・概要
植物工場のメリット・デメリット。現場でわかったこと全部言う
こんにちは、今村です。
私は、植物工場の現場で10年以上働いてきました。
植物工場は「ビジネスとして厳しい」って話はよく耳にしますよね。 初期費用やランニングコストが高額だったり…。
実際、内部にいるとわかりますが、確かにそんな一面もあります。
でも「厳しい」「赤字ばかり」って話題は強烈だし目を引くから、ネガティブなイメージが先行し過ぎている気がします。
まぁ…大型の植物工場が倒産、撤退って話もあるし、無理もないのですが。
というわけで、植物工場ビジネスを長年経験してきた私のリアルな情報として、この記事を残します。
語るテーマはこの2つ。
- 働く人の観点
- ビジネスとしての観点
植物工場に興味があれば、最後まで読むことをオススメします。
現場のリアル!植物工場のメリット・デメリット【働く人の観点】
植物工場は、農業に新たに参入することや転職先としても注目されてます。
でも、もしかすると、その実態はイメージと異なる部分もあるのかも。
なので、まずは働く人の観点から、植物工場のリアルを語ります。
植物工場の仕事内容について詳しく書いた記事もあります。
【働く人のメリット】快適に仕事ができますよ
私が植物工場で働き始めた2011年頃は植物工場ブームで、次々に植物工場が建設されていた時期です。
当時から、植物工場は「農業の最先端」というイメージがありました。
まぁ、現場の実態はどうなのか?って情報は、ネット上に情報がなかったので、 私は「とりあえず飛び込んでみた」という感じなのですが。
そんな植物工場で働いてみると、以下のメリットを感じました。
- 天候に左右されない安定収入: 作物が自然災害の影響を受けません。露地栽培と比較して、年間を通して安定した収穫と収入が見込めます。天災で売上が立たないとか、冬は仕事がない、とかは基本的に無いです。
- 快適な労働環境: ほぼ全てが屋内での作業なので、屋外での重労働や暑さ・寒さに悩まされる心配がありません。露地農業と比較すると、労働環境は快適ですよね。
- 最新技術に触れられる: ITや自動化技術を活用した栽培管理など、最先端技術を習得し、スキルアップを目指せる環境です。
気温が安定した室内で働ける植物工場は、職場環境として悪くないですよね。
ちなみに、業界各社のPRやメディアなどからは、植物工場内部ではAIやIoT、自動化がかなり活用されている印象を受けませんか?
実際はそうでもありません。
確かに活用されてきていますが、実はまだまだ人の手に頼る部分が多い業界です。
いち早く、研究や導入を進めている現場でも、今はまだ手探りで少しずつ、といった感じです。
まだまだ「最先端」とは言えない部分は多いです。例えば、日本の農業現場ではFAXなど古い通信手段が今も使われていたり…。
とはいえ、私が業界で働き始めた10数年前よりは、着実にテクノロジーの利用は進んでいます。
【働く人のデメリット】覚えることは多いです
デメリットというか、植物工場で働く人にとって、負担になる部分もあります。
例えば、
- 高い専門知識が求められる: 栽培技術だけでなく、設備管理や環境制御などの幅広いスキルが必要です。現場スタッフのスキルが低いと、野菜がまともに育たない場合も。工場全体の収益において、現場のノウハウやスタッフのスキルの影響が大きいです。
- 常に学び続ける必要がある: 新しい技術や設備が次々と開発されるため、常に学び続ける姿勢が求められます。
常にレベルアップを求められる部分は、デメリットとも言えるかもしれません。
なぜなら、現場のノウハウが収益に直結するので、レベルが低いままではそのうち事業として立ち行かなくなるから。
私は長年、いくつもの植物工場で生産者さんをサポートする仕事をしてきました。 このスキル習得には、どこの植物工場でも苦労しています。
関係者が絶対言わない…植物工場の課題は「人が定着しない」こと
特に異業種から参入した場合、現場の方々が野菜栽培の知識を持たないケースも多々あります。
植物工場で必要なノウハウは、栽培知識ではなく、工業的な生産管理、衛生管理など、覚えることが幅広いです。
新規参入をした企業が失敗してしまうケースは、技術不足が一因にあると私は考えています。
それと、働く人にとってはより切実なデメリットとして、スタッフのお給料は比較的高くないのかもしれません…。(注:私の感想です)
そもそも植物工場ビジネスって…どうなの?
さて次は、ビジネスとして植物工場ってどうなの? という観点からも解説します。
一旦、植物工場と、従来の農業形態である屋外の畑での栽培(露地栽培)、施設栽培の特徴を整理しますね。知ってる方は読み飛ばしてください。
| 植物工場 | 施設栽培 | 露地栽培 | |
|---|---|---|---|
| 栽培環境 | 完全人工制御 | 半人工制御 | 自然環境 |
| 生産量 | 安定 | ある程度安定 | 不安定 |
| 品質 | 安定 | ある程度安定 | 不安定 |
| コスト | 高い | 中間 | 低い |
| 栽培品目 | 葉物野菜中心 | 果菜類、花卉類(切り花・鉢花などの観賞用植物)など | 多様な作物 |
| 省力化・自動化 | 高度 | 部分的 | 難しい |
植物工場は環境をコントロールできるため、なんといっても安定生産が最大のメリット。
また、害虫の発生リスクが低く、農薬の使用量を大幅に削減できるため、環境負荷の低減にも貢献できます。さらに、多段式栽培などにより、限られたスペースを有効活用できるため、土地生産性が高い点も魅力。
一方、初期費用やランニングコストが高額になる点が最大のデメリットです。
実際にこれは深刻。
たとえ大手企業が参入したとしても、あっという間に撤退するケースの一因になってます。以下の記事にも詳しく書きました。
そもそも赤字から抜け出せない問題については、以下も参考にどうぞ。
ビジネスの観点から、植物工場のメリット・デメリット
それでは、ビジネスの観点から見た植物工場のメリット・デメリットを、私の経験を交えながら詳しく解説します。
メリットだけを見て安易に導入を決めるのではなく、デメリットも踏まえた上で、しっかりと検討することが重要です。
【ビジネス面のメリット】安定栽培
メリットを一言でいうと、「安定栽培」でしょう。 基本に忠実な栽培管理さえ行き届いていれば、そうそう生産体制が崩れることはありません。
悪天候で青果卸売市場での野菜の供給不足が起きている状況でも、いつもと変わらない出荷量を保てます。
でも、たまにこんな事も。
現場にいると、「最近、〇〇社(ライバル社)の生産体制が悪く、出荷量が減っている」といった話を耳にすることがあります。
つまり、受注に対して出荷量が足りていないわけです。
現場の管理者が未熟であるか、または単純なミスで、工場の生産量が減ってしまったわけです。そんな事態は意外と起きてしまうんですよね。
とはいえ、人的要因以外では、天候に左右されない分、他の農業形態よりも安定しています。他には以下のようなメリットもありますよ。
- 高品質な作物を安定供給: 温度・湿度・CO2濃度などを最適な状態に保つことで、高品質な作物を年間を通して安定的に生産できます。
- 人手不足の解消: 自動化システムを導入することで、人手に頼らない効率的な作業が可能となり、人手不足の解消に貢献できます。
- 環境負荷の低減: 農薬の使用量を大幅に削減でき、環境負荷の低い持続可能な農業を実現できます。
- ブランド化による高付加価値化: 「安全・安心」「高品質」を売りにしたブランド化を進めることで、高価格帯での販売も期待できます。
【ビジネス面のデメリット】コスト
一方デメリットは、というと「コスト」です。これに尽きます。
全植物工場事業者の悩みのタネでしょう。間違いありません。
私が植物工場で働いているこの10年以上、ずーっとコストが上がり続けています。
デメリットは以下のような感じ。
- 初期費用が高い: 施設の建設費や設備投資に多額の費用がかかります。特に、完全人工光型は高額になりがち。
- ランニングコストがかかる: 電気代や空調費用など、運営費用も高いです。特に、光熱費は大きな割合を占めます。
- 栽培できる作物が限られる: 人工光型の植物工場の場合、背丈が高くなる作物や、根が深く張る作物は、栽培が難しいです。
- 高度な技術や知識が必要: 栽培環境の制御や設備管理など、専門的な知識や技術を習得する必要があります。
特に原材料の値上げ、日本での電気料金の値上がりが深刻です。
植物工場で失敗しないためのポイント
植物工場にとって良いことも悪いことも書きました。 ただ、やっぱり悪いことの方を気にする人が多いみたいです。
植物工場は、適切な運営を行えば着実に利益を生み出すことができます。
ここでは、植物工場ビジネスで失敗しないためのポイントを簡単に5つ紹介します。現場の細かい話ではなく、あくまでビジネス的な話です。
事前の綿密な市場調査
- ニーズの高い作物を探る: 流行に左右されにくい、安定需要が見込める作物を選びましょう。
- 競合が多い場合は差別化を意識: 高品質、希少性、機能性などを打ち出し、他の農家との差別化を図りましょう。
これらは基本です。
特に異業種参入の企業では、作ったものを売る考え方(プロダクトアウト)の視点が強いケースがあります。必ず市場の需要に合わせて作る考え方(マーケットイン)の視点を持ちましょう。
市場から求められている野菜でなければ売れません。そして、自分たちの特色を加えること。日本では安価で高品質な野菜が簡単に手に入るので、差別化されていない商品も売れません。
資金計画は余裕を持って
- 自己資金と融資のバランス: 初期費用だけでなく、運転資金も考慮した資金計画を立てましょう。
- 助成金・補助金の活用: 各国・地域の行政による補助金制度(国によって異なります)を積極的に調べて活用しましょう。
植物工場は初期投資が高いので、事業スタート当初の黒字化は難しいです。
しかし、数年後の事業計画ほど当てにならないものは無いですよね。予定より利益率が悪い、なんてことは普通にあり得ます。
特に、短期的な利益を求める大企業の場合、早々に撤退しなければならないリスクを孕んでいるってことです。
最適な栽培環境の構築
- 植物工場の種類の選定: 資金力や栽培品目に合わせて、完全人工光型と太陽光併用型から最適な方を選びましょう。
- 設備の導入・運用ノウハウ: 最新技術を積極的に導入し、効率的な運用方法を確立しましょう。
栽培技術は植物工場の肝です。正しいノウハウを現場で運用する必要があります。
いくつもの植物工場を見てきて私が思うのは、収益性を決めているのは現場スタッフのスキルやノウハウです。最新設備だから成功すると思い込んでいる人もいますが、間違いです。
経験豊富な人材の確保
- 栽培管理の専門知識: 植物生理、病害虫対策などの知識を持つ人材がいれば心強いでしょう。
- 設備管理のスキル: 設備のメンテナンスやトラブル対応ができる人材がいれば安心です。
現場でノウハウを使うのは「人」です。
栽培、生産管理、衛生など、幅広い知識と経験を持ち、植物工場の現場で活躍できるスキルセットを持つ人材は、すごく少ないです。どこの植物工場でも、基本的にそのような人は雇えません。ということは、教育するしか無いということ。
情報収集とスキルアップ
- 最新技術や市場動向: 常にアンテナを張り、セミナーや勉強会に参加するなどして、最新情報を入手しましょう。
- 他社の成功事例: 先進的な取り組みを行う企業の視察などを通して、成功事例を学びましょう。
情報収集は大事です。しかし、現場が本当に必要とするような、収益性や効率アップに関する実用的なノウハウは少ないです。
植物工場の基礎的な管理方法についての本・情報・セミナーはありますが、それだけでは現場力は上がりません。現場で使える、生きた情報じゃないと。
植物工場にとって一番重要なこと
植物工場において、最新の設備やシステムは確かに重要です。
しかし、それらを最大限に活かし、高品質な作物を安定供給し続けるためには、何が必要か。
私は 「人の力」 こそが最も重要だと思っています。
経験豊富な人材は不足している。そこで重要となるのが 人材育成への投資 です。
とはいえ、現場の収益性に直結するような、生きたノウハウを学べる場はほとんどありません。
まとめ
植物工場のメリット・デメリット、そして失敗しないためのポイントについて解説しました。
植物工場は、決して簡単なビジネスモデルではありません。しかし、適切な知識と準備があれば、着実に利益を生み出すことができます。
この記事が、植物工場に取り組む皆さんの参考になれば幸いです。